この記事は、Fincsというコミュニティ型オンライン学習プラットフォームを運営している私が、これまでの講座運営支援の現場で実際に見てきた成功例・失敗例をもとにまとめたものです。
私は現在、株式会社アルカドの社長としてFincsの開発を指揮しながら、担当者と一緒に講師支援にも関わらさせていただいています。Fincsを立ち上げたのは、「各分野で高い知見を持つ方々が、自分の言葉で、熱量を持って人に伝えられる環境をつくりたい」と思ったからです。そして、ただ知識を届けるのではなく、“熱狂する小さなコミュニティ”を生み出すような講座こそ、これからの学びには特に必要だと感じています。そんな思いでこの1年間、Fincsという場で様々な講座を見てきました。まだ中間報告ではありますが、私が感じた成功する講座に共通する「3つの力」と「2つの資質」について共有させてください。
それは、公式にすると次のように集約できるのかなと思います。
(マーケティング力 + コンテンツ力 + 持続力) ×(信念 × 誠実さ)
この数式の意味と背景を、実際の講座事例とともに、じっくりお伝えさせてください。
講座をうまく運営されている方が共通して持つ力は「マーケティング力」「コンテンツ力」「持続力」です。それぞれみていきたいと思います。
コミュニティ型の講座で何よりも大切なのは、「誰がその講座を開いているのか?」です。コンテンツの質ももちろん大切ですが、受講者はまず「この人から学びたい」と思わなければ申し込みません。既にインフルエンサーとして活動している方であれば、集客に苦労はしません。ですが、そうでない方はまず自分自身を認知してもらうことから始める必要があります。特にSNSでの発信は、講師としてのキャラクターや専門性を知ってもらうための強力な手段です。
ここで大切なのは、フォロワー数の多さよりも、どれだけ“濃い”ファンがいるか。つまり、あなたの発信をしっかりと受け止め、リアクションをしてくれる“エンゲージメントの高いフォロワー”の存在です。
コミュニティ講座の集客力 = フォロワー数 × エンゲージメント
特に、これから講座を始めようとする人にとっては、認知獲得とエンゲージメントの両方を意識した発信が、最初の大きなハードルとなるでしょう。
Fincsで活躍する講師の多くは、「プロダクトローンチ型」の販売手法よりも、「メディアマーケティング」に軸を置いています。プロダクトローンチとは、顧客との信頼関係を築きながら見込み客を集めて短期的に商品を販売する手法です。もちろん、正しく扱えば非常に有効な手法ではあるのですが、短期的な売上を最優先した不適切な活用の横行によってはなかなか通用しづらくなってくるでしょう。実際、プロダクトローンチの第一人者であるフィリップ・タロ・ヒルトル氏も、
日本で横行している“短期的なローンチ至上主義”に対し、「本来のPLとは違い、信頼ではなくテクニック頼みになっている」と警鐘を鳴らしています。このような販売手法は、最初こそインパクトがあるものの、年々ユーザーに見抜かれやすくなり、効果が薄れてきているのも事実です。
と語っています。
結局のところ、手法に過度に頼らず継続的に価値ある情報を提供し、受講生との信頼関係を築くことが最も重要だと私たちは考えています。そのため、Fincsではアフィリエイト機能などの集客機能は搭載しません。一方でFincsではコンテンツ配信機能やコミュニティ機能など講座の価値と受講生の信頼を構築するための機能開発に注力しています。
集客や情報発信をすべて自分で完璧にこなす必要はありません。必要に応じて専門家に協力してもらうことは、大きな選択肢になります。
たとえば、X(旧Twitter)やInstagramの投稿は個人でもある程度運用できますが、YouTubeの編集やLP(ランディングページ)の設計、広告出稿などは、ある程度の専門知識が必要です。発信したい内容や魅力があっても、それを適切に「形」にできなければもったいない。そんな時は迷わず、プロのパートナーを頼ってください。また、講座を広めるために広告を使うことも可能ですが、それには初期投資と十分な戦略が必要です。焦って費用を投じる前に、準備をしないとエンゲージメントの低い受講者ばかりになり、継続率は上がらず広告頼みの講座の悪循環陥ってしまいます。さらに一度信頼を失えば復活するには相当な時間を要することになるでしょう。
今や情報はあふれています。情報量だけでなくAIがさらに分析、調査、生成までしてくれます。こうした時代において、誰が語っているのか、どんな背景や実績があるのかが、コンテンツの価値を決定づけます。
単に情報を伝えるだけでなく、「この人だから信頼できる」「この人の経験を聞きたい」と思ってもらえるようなストーリーや実体験こそが、最大の差別化ポイントになるのです。
ウィキペディアのように、誰でも知っている情報にお金を払う人はいません。それと同じで、AIが生成できるような一般的な情報も、次第に「価値がない」と見なされるようになります。しかし、あなた自身の体験・失敗・成功・試行錯誤といった一次情報は、どれだけAIが進化しても再現できません。
だからこそ、「自分にしか語れないこと」を掘り下げて伝えていく必要があります。
マーケティングは外注やサポートが可能ですが、コンテンツの中身は講師自身が担うもの。その分野で信頼され、成果を出し続けるには、日々の学びと試行錯誤が欠かせません。Fincsで成果を出している講師たちは、常にアップデートを繰り返し、知識も技術も磨き続けています。
コンテンツ力は、補完できない力。だからこそ、自分自身がその道の第一人者になる努力を続けることが大切です。
コミュニティ型講座は、「販売して終わり」ではありません。受講生と関係性を築き、継続して価値を提供し続ける必要があります。そのため、講座を始める前に「これを長く続けられるか?」という問いにしっかり向き合ってください。不安がある場合は、まずは買い切り型の講座からスタートするのも良いでしょう。
気合いと根性では長続きしません。以下の6つの要素が揃ってはじめて、持続可能な講座運営が実現します。
1. 受講生からの感謝
入会時の期待値を超える体験を提供することでしか、感謝と信頼は生まれません。誇大広告をして期待値を下回ることだけは避けてください。
2. 収益性
自分の生活やモチベーションを支えるだけの収益が得られるかどうかは非常に重要です。しっかりと見立てをしてから講座スタートに踏み切りましょう。
3. 仲間
一人で抱え込まず、運営メンバーや受講生を巻き込んでチームとして運営できる体制を作りましょう。私たちFincs運営チームにもいつでもご相談ください。
4. 明確な目標
どこを目指すのかが曖昧だと、方向性を見失います。
5. 無理のない講座設計
意気込みすぎると燃え尽きます。自分にとって「苦にならない」講座内容にしましょう。
6. 楽しむ
自分が楽しめていないと、受講生も自然と離れていきます。
コミュニティ型講座は、短期的なマネタイズを目的とするには向いていません。「とりあえず収入を得たい」という動機で始めると、受講生との信頼関係を築くことが難しく、継続できなくなってしまいます。
一方で、自分の思想やビジョンを仲間と共有したいという強い想いを持っている方にとって、コミュニティ型講座は最適な形です。なぜなら、そこには「共感を生む力」があるからです。受講生にとっても、「この人の考えに共感したい」「この講師と一緒に学びたい」と思える講座ほど、長く参加し続けたいと感じます。
では、実際に強い信念を持ってFincsで成功している講師の事例を見てみましょう。あくまで事例紹介であり、講座を推奨をするものではないので、イニシャル表記をさせていただきます。
講座を開始して1年も経たずに、受講生が2,000名を超えた人気講座があります。
講座の代表者は、「怪しいAI情報が氾濫する中で、正しく実践的なAI活用を広めたい」という信念のもと、講座を立ち上げました。多くのAI系講座が数十万円の高額な買い切り形式で販売される中、月額5,000円のサブスクリプション形式を選択。広告に頼らず、受講者の高い満足度を維持しながらFincs内で価値を提供し続けています。その結果、受講生からの信頼も厚く、会員数も右肩上がりで増加しています。
この方の講座は、比較的高価格帯にもかかわらず、受講生が400名を超えており、その多くが継続して受講しています。なぜ、これほどまでに多くの受講生を惹きつけているのか。それは、講師のストイックな姿勢と圧倒的な努力にあります。
講座を通して「人生を懸けて受講生を導いていく」という強い覚悟と信念が伝わってくるからこそ、多くの人が信頼し、ついていくのです。
コミュニティ型講座では、受講生との距離が近くなります。クローズドな環境で、熱量の高い受講生に囲まれるからこそ、講師のちょっとした言動が信頼関係に大きく影響するのです。どんなに優れたコンテンツを持っていても、どんなに高い実績があっても、不誠実な対応ひとつで受講生は離れていきます。SNSのように「いいね」や再生回数が評価軸になる場所とは違い、Fincsのような学習コミュニティでは、人と人との信頼が唯一の土台です。
この講師は、映像クリエイターとして活躍する専門家です。講座は、あえて広告やLINE販売などのマーケ手法に頼らず、口コミによって受講生を集めています。その背景には、新規受講生一人ひとりに対して丁寧なサポートを行い続けている姿勢があります。その誠実な対応に触れた受講生たちが、「この講座はもっと広めるべきだ」と、自発的にSNSで紹介し、自然と口コミが広がり着実に入会者が増加しています。
講座開講から1年以上経っても受講生の人数が500名以上の高水準でほとんど変わらない講座もあります。その理由は、あえて上限人数を設けて運営しているからです。講座概要では「週2回程度の情報提供」と記載されているものの、実際にはほぼ毎日投稿。受講生からは「神対応」とも言われるほどの満足度で、入会希望者は後を絶ちません。ですが、コミュニティの品質を維持することを最優先にしており、既存の受講生との信頼関係を守るために、あえて人数制限を設けているのです。
最後にもう一度、最初に紹介した公式を振り返りましょう。
(マーケティング力 + コンテンツ力 + 持続力) ×(信念 × 誠実さ)
この数式が示しているのは、「右側」がゼロだと、全体がゼロになるということです。マイナスの場合には講座を提供することが社会的に悪影響を及ぼすでしょう。
左側(スキル)は、後から身につけることができます。また、コンテンツ力以外は外部のサポートで補うことも可能です。しかし、右側(信念と誠実さ)は、一朝一夕では身につかない“人間性”に関わる資質です。
だからこそ、Fincsでは講師審査の際に「信念」と「誠実さ」を何より重視しています。
・マーケティング力は補完可能。プロの力を借りてOK。
・コンテンツ力は補完不可。自分自身の経験と知識を磨き続けること。
・持続力には戦略と環境づくりが欠かせない。
・信念と誠実さがなければ、どんな講座も長続きしない。
Fincsでは、あなたの信念と誠実さを土台に、多くの人と共に学び、成長できる講座をつくるお手伝いをしています。記事の内容からも伝わるように、誰でもコミュニティを気軽に作れるを標榜するプラットフォームではありません。
あなたの本気の想いを、必要としている誰かに届ける。
そのための第一歩を、Fincsはお手伝いしていきます。