学習塾がオンライン講座を「別の商品」として売るには
結論
オンラインを、通塾の代わりにしないでください。
ここを外すと、いくら準備しても売上は増えません。いま月謝を払っている生徒が、月謝の一部をオンラインに移すだけになるからです。手間だけが増えて、合計は変わりません。
オンライン講座は、いまの塾では売れなかった相手に、売れなかったものを売るための商品です。そう設計したときだけ、新しい売上になります。
食い合いは「顧客を分ける」だけでは防げません
「対面は地域の生徒、オンラインは遠方の生徒」——よく言われる分け方で、方向は正しいです。ただ、これだけでは足りません。
買う人を分けても、商品が同じなら食い合います。 「対面と同じ授業を、オンラインでも受けられます」と案内した瞬間、通える生徒も比べ始めます。安いほうを選ぶ理由ができてしまいます。
分けるべきものは3つあります。
| 分けるもの | 対面 | オンライン |
|---|---|---|
| 誰が買うか | 通える生徒 | 遠方・部活で通えない・特定科目だけ欲しい |
| 何を売るか | 通年の指導。進路まで見る | 単発の講習。範囲を区切る |
| どこまで見せるか | 教室で完結 | 買ったものだけ見える |
3つ目が抜けがちです。「オンラインの生徒には、オンラインで買ったものだけが見える」状態を作れているか。 ここが曖昧なまま始めると、対面の生徒に「あっちも見せてほしい」と言われて、境界が崩れます。
何を最初の商品にするか
すでに教えていて、すでに評判がいいものを、そのまま切り出すのがいちばん早いです。
ゼロから新しい講座を作らないでください。作ったことがないものは、売れるかどうかも分かりません。
切り出しやすいのは、期間と範囲が決まっているものです。
- 夏期講習・冬期講習の、1科目分
- 定期テスト前の対策
- 英検・漢検の級別対策
- 入試までの直前講座
なぜ期間が決まっているものがいいのか。
- 買う側が判断しやすい。 「4週間で、この範囲」は、月額いくらより決めやすい
- 作る側が終われる。 毎月何かを出し続ける約束をしないで済みます
- 売れたかどうかがはっきり分かる。 期間が終われば結果が出ます
そして、保護者向けの講座も有力です。「家庭学習の見守り方」「志望校の決め方」は、対面の塾では売っていない商品で、通っていない家庭にも売れます。食い合いが構造的に起きません。
「講座」ではなく「結果」を売る
これはオンラインに限りませんが、オンラインではより効きます。教室で説明できないぶん、書いてあることが全てだからです。
- ✕ 「中学英語オンライン講座・全20回」
- ○ 「定期テストの英語を80点まで上げる4週間」
前者は「何が入っているか」の説明で、後者は「何が起きるか」の説明です。保護者が財布を開くのは後者です。
ただし、書けないことは書かないでください。 「必ず上がります」は書けません。書けるのは、何をどこまでやるかです。
売れた後に必要になるもの
ChatGPTなどに聞くと、ここまで——市場を見て、商品を決めて、小さく売ってみる——は丁寧に教えてくれます。その先が抜けています。
売れると分かった瞬間に、次の3つが必要になります。
1. 買った人のリストが、使える形で残ること
夏期講習を売ったなら、冬期講習はその人たちに売るのがいちばん早い。ただし、「誰が夏期講習を買ったか」が分かり、その人たちにだけ案内を送れる場合に限ります。
名簿がスプレッドシートにあるだけでは足りません。手で宛先を選んで送るのは、30人までです。
2. 買ったものだけが見える状態
商品を2つ、3つと増やしていくと、「この人は夏期講習と英検対策を買っていて、冬期講習は買っていない」という状態が普通になります。それぞれに何が見えるべきかを、人間が管理するのは無理です。
3. 次の商品への入口
買ってくれた直後は、いちばん関心が高い瞬間です。そのタイミングで次の案内が出せるかどうかで、2つ目が売れる確率が変わります。
この3つは、売れる前には要りません。売れた瞬間に要ります。 だから、売れるかどうかを確かめる段階で高いシステムを入れる必要はありませんが、売れたときに移れる先を知っておく必要はあります。
2つ目の「買ったものだけが見える状態」をどう設計するかは、買い切りと月額の両方で売るにはで詳しく書きました。
いつ移るべきかは、専用システムに移すのはいつかに書きました。
動画を先に作らないでください
最後にもう一度、順番の話です。
「オンライン講座をやろう」と決めた塾がまず始めるのが、動画の撮影です。これは高い確率で失敗します。
- 何十本も撮ってから、売れないと分かる
- 撮り直したくなっても、量が多すぎて直せない
- 撮影に時間を取られて、目の前の生徒への指導が薄くなる
先に売ってください。 案内ページを作って、既存の保護者と卒業生に声をかけて、10人でも申し込みが入るかを確かめる。申し込みが入ってから、その回で使う分だけ作る。
売れなければ、失ったのは案内ページを作った時間だけです。
よくある質問
Q. 通っている生徒にも売っていいですか
売っていいですが、通年の指導と重ならないものにしてください。 たとえば通常授業では扱わない科目、あるいは保護者向けの講座です。重なるものを売ると、月謝から移るだけになります。
Q. 対面より安くすべきですか
安さで比べられる形にしないでください。 中身が違えば、値段を比べる必要がなくなります。同じ授業のオンライン版にすると、必ず「安いほう」を選ぶ理由が生まれます。
Q. 動画を撮る設備は必要ですか
最初は要りません。画面と声が届けば足ります。 設備を整えるのは、売れて、作り続けると決めてからで間に合います。
Q. 講師が足りません
オンラインの講座は、対面と違って同じものを何度も届けられます。 一度作った講習は、翌年も売れます。講師の時間を増やさずに売上を増やせるのは、ここです。
Q. 集客はどうすればいいですか
最初は既存の保護者・卒業生・地域からです。 いきなり全国を相手にしないでください。すでに信頼がある相手に売れないものは、知らない相手にはもっと売れません。
Fincs の場合
Fincs for School は、学習塾やスクールが講座を販売・運営するためのプラットフォームです。上で挙げた「売れた後に必要になるもの」に沿って書きます。
- 単発の講習を売る — 買い切り(一括)のプランに「利用できる日数」を設定できます。夏期講習を、その期間だけの商品として売れます
- 買ったものだけが見える — 教材とチャットのチャンネルに、「このプランの契約者だけ」という公開範囲を設定できます。プランを増やしても、設定を1か所で管理できる連動の仕組みがあります
- 買った人にだけ案内を送る — 受講者を条件で絞り込んでメールを送れます。送信前に対象人数を確認できます(Fincs for School のご契約では標準でご利用いただけます)
- 次の商品への入口 — 契約が完了した直後の画面で、別のプランを提案できます(対象は月額プランです)
- 無料の講座 — 0円のプランを作れます。説明会や体験講座を、同じ仕組みの上で配れます
- 手数料 — 月額19,800円(税込)で、講師の売上から差し引かれる手数料は0%です。受講者のお支払い時に決済手数料5%がかかります
機能ごとの詳しい可否は、できること・できないことにまとめています。
まとめ
- 通塾の代わりにしないでください。 代わりにすると売上は増えません
- 分けるのは買う人・売る商品・見せる範囲の3つです。買う人だけ分けても食い合います
- 最初の商品は、すでに教えていて評判のいいものを、期間を区切って切り出す
- 動画を先に作らないでください。 先に売ってから、必要な分だけ作る
- 売れた後に要るのは、買った人のリスト・買ったものだけが見える状態・次の商品への入口の3つです